2023年12月12日火曜日

リニアモーターカー南アルプス横断路線について

 とりあえず、JRの計画線を示しておきます。

 東海道新幹線は旧東海道本線がそうであったように既にダイヤが逼迫状態になっております。高速道路の方は新東名、名古屋湾岸、新名神などでバイパス路線を作れましたが、鉄道の方はそう簡単にはいきません。

 というわけで、新たな交通システムとしてリニア新幹線が浮上しています。それで今静岡県が反対しています。大井川の水源がトンネル工事でやられる可能性があるからです。実は前例があって東海道線の丹那トンネル(1934年開通)は怖ろしいほどの地下水を排除して建設されました。その時に地下水の流れが変わったらしく、上部の丹那盆地は大きく地下水位が下がってしまい水不足に陥りました。当時としては技術的にもどうしようもなく、丹那盆地は牧畜などへの産業転換を余儀なくされました。 

 じゃあ今の技術だったら大丈夫なのか?そんなのやってみないと分からないと思います。JRは地下水を大井川に戻す計画を立てていますが、上手くいくかはやってみないとわからないんですよねー。

 リニア新幹線は速度が速いのでできるだけ直線的に建設する必要があります。つまり、新幹線以上に地元の意向なんて気にしているわけにはいかないと思います。システム自体はほぼ完成しているので、あとはどうやって建設するかという問題だけです。 

 ここで明らかに分かるのは静岡の平野部を通すのは問題があるという事ですね。土地買収だけで膨大な費用が掛かりますし、騒音対策も深刻です。新幹線開通当時は問題はなかったのですが、線形が悪く、車両の高速化がされても300㎞/h以上出せないところが多々あります。特に伊豆半島を横断する場所に余裕がありません。ここには北側に高速道、南側に鉄道のトンネルが集中しています。


 それで南アルプスをぶち抜くという壮大な計画なんですが、もう最初から難工事が予想されています。(多分工事関係者は確実に把握していると思います。)なにしろフォッサマグナをぶち抜く計画だからです。

 フォッサマグナの領域内では、もう断層が滅茶苦茶になっていて、過去の高速道路トンネル建設でひどい目にあってます。土圧でシールドマシンが圧壊したり、一部区間がどうしても突破できなくて線形を大幅変更したりしているんですよね。自動車道路でしたら多少線形を変更しても何とかなりますが、リニアは線形の変更は難しいので、どうなるんだろう?

 世界的に有名なトンネルと言えば、スイスのゴッダルトベーストンネル、ドーバー海峡横断トンネルが上げられます。

 

 でもこれらは安定したヨーロッパの大陸に掘られたトンネルなのです。ヨーロッパアルプスは、地層が複雑とはいえ褶曲山脈で活断層がありません。ドーバー海峡に至っては一様な砂礫層を掘っていくだけでした。シールドマシン工法が全面的に使われ、川崎重工なんかはドーバーで世界記録なんか樹立したりしてます。

 日本のトンネルの場合そんなに簡単に行きません。地下にどんな活断層や軟弱地盤が隠れているか実際に掘ってみないと分からないからです。前述しましたが、シールドマシンが土圧に負けて圧壊し、在来工法でなんとか防いで、シールドマシンを分解して脱出させたという事例もあります。また、あまりにも岩盤が固すぎて毎日シールドマシンの切削刃を交換したという事もあるのです。(この辺は土木系YOU TUBEが詳しいので見てもらえるといいと思います。)  

 もちろん事前に地質調査はしますが、実際トンネル工事をしてみないと深いところは分からないので、日本では工事現場の最先端で地質状態を確認しながら掘っていくという方法をとります。 

 青函トンネルに至っては着工(1961年)から使用開始(1987年)までなんと26年かかってます。

 
 途中に活断層が無数にあり、現代のシールド工法でもどこまで行けるのかは分かりません。先人の努力はすごいです。ちょっと付け加えると距離の短い関門トンネルも大きな課題を抱えています。湧水の発生がものすごく、500t/日の排水が行われています。関門海峡トンネルは戦前の計画なので安全保障上トンネルにしたのですが、現在では橋梁や新たに深い場所にトンネルを掘るという案も浮上しています。
 
 関門海峡は見たことある人には分かると思いますが、泳いで渡れるんじゃねというくらい狭いです。しかしその海底は軟弱地盤で埋め尽くされているそうです。アクアラインのように沈埋工法もありかと思いますが、潮流が速く、下手をすると海底地盤が流される可能性もあるとのこと。
 
 日本のような複雑な地下構造をもつ場所はトンネル建設に予想外の難題をつきつけられる可能性もあるのです。もちろん現代の工事でも「これは無理やー!」とあきらめた事例も多々あります。生きているうちにリニアに乗れたらいいなとか気長に待つのもいいかと思います。

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