2021年6月29日火曜日

消防団の思い出

  うちの市の消防署が市の中央部から、うちの家の近くの開発地に移転しました。先程消防車が出動した音が聞こえたので、なんか消防団活動をやっていたころのことを思い出しました。現役のころ、最初のうちはは消防車が出動した音が聞こえたらちょっとびくっとしていましたが、大体交通事故での出動が多いので、まあ、消防団まで出動のかかることは少ないです。

 消防団って何してるんや?という人が多いと思いますが、公式ウェブサイトがありますので、そちらを見てもらえると、ある程度分かると思います。https://www.fdma.go.jp/relocation/syobodan/

  簡単に何をするかといえば、消防、警察の下働きで(組織上は自治体に属しています。)何かあった時の人足であります。ぶっちゃけ、かなり組織だったボランティア団体だと思ってもらえればいいと思います。都市部だとお手当も良くて、10年以上前になりますが、15万円/月くらいもらえたようで副業でやっている人も多くなかなか空きがないとか・・・。

 自分たちのような田舎になると2万円/年くらいになります。それすらも団に寄付して、出動した人たちの食費や、装備の買い替えなどに使います。マジでボランティア活動です。自分の所属していた分団は市街地でしたのでさほど厳しいところもなかったのですが、郡部の方だと、消防団に入らないと村八分だとかフツーにあったりします。仕事上どうしても参加できないとかなってくると、寄付金(多いとことは5万円/年)を払わないといけません。公式には禁止されていますが、まあ、けっこういまだにやってるところは多いんじゃないかなー。だって忘年会とかなどのイベントとかで団員はお金出さなくていいそうですから。うちの分団は貧乏なので、「養老の滝」とか安いところに自費で行っていました。

 では、出動回数はどれくらいなのか?これは本当に所属している分団によって異なります。うちは市街地ということもあって、訓練、警戒以外の出動が3回/年くらいありました。多分、この地方の消防団の中ではダントツで出動回数が多かったと思います。人によっては消防団に所属している間に1回も火事現場に行かないという人もあります。自分は何回も出ています。筒先もって消火に当たったこともあります。自分が行くと大抵死人が出るのでお前は来るな!とかブラックジョークを言われたりしました。

 郡部の方は火事での出動は少ないですが、分団訓練とかの回数が多く、痴呆老人が行方不明になって、山狩りとか、貯水池の水を抜いて捜索とかあるみたいです。

 ボランティアとしては、まあそこそこ良いのではないかと思います。消防の方からも訓練を推奨されていることもあって、自分も2回ほど救命救急訓練を受けました。AEDが頼りだということしか覚えていませんけど・・・。

 ここからは批判的なことになります。消防団員として活動していると死亡する可能性があるということです。おそらくですが、予備自衛官より死亡する可能性は高いです。なにしろこっちはたいして訓練も受けていない素人です。そのうえ地方方面隊の隊長とか言っても素人もいいところなのです。どこまで2次災害を受けずに活動できるかがちゃんと分かってない場合があるのです。

 東日本大震災では最後まで住民の避難誘導にあたって亡くなった消防団員がたくさんいます。警戒にあたっていたであろう消防団のポンプ車が津波に飲み込まれた動画を見たときは泣きました。そんな指令を出したバカは誰や!とか思ってしまいます。一応保険はかかっていますが雀の涙であります。地方の消防団員はただ使命感のみで頑張っているだけなのです。

 火事に対してはある程度ルーティンが決まっているのでそう怖くはないのですが、水害や地震、火山の噴火に対しては予測がつかないので、対応に当たる消防団員は怖い思いをしていると思います。

 自分の場合は1度だけ命の危険を感じたことがあります。台風で川が氾濫しそうになった時、土嚢を積めという指令が来ました。「はあ!」まだ15人くらいしか来てないんだけど・・・。(平成の市町村大合併の後の再編前でしたのでフル出動したら400人くらいいました。)さすがにこれは無理だと思われたのか、土嚢を積むのは消防や警察の隊員たちがやってくれて、自分たちは土嚢作成に携わりました。この時の方面隊長にはいまだにちょっと腹が立ちます。指令車のところでうろうろしてないでお前も土嚢を作れや、積む方が早いやんけ!

 火事の時は消防団員は補助活動に従事します。都市部では装備がそろっているそうですが、地方ではそうではありません。 ヘルメットと法被、鉄板入りの長靴しか持ってないもんね。火元に突撃するのは耐火服やボンベを背負った消防隊員になります。後の雑用は消防団に回ってきます。交通整理をしたり、延焼を防ぐために周りに水をかけたりです。時々ですが、水をもっと入れてくれという指令が来たりして、別方向から放水をしたりもします。

 郡部の方では家の間が離れていることももあり、全焼するまで(梁が落ちるまで)水を入れないこともあるそうです。全焼と半焼では保険金額が大きく異なるからです。半焼でも、相当量の水を入れるので、実質的な被害は全焼と変わりません。

 たいしたことしてないように思われるかもしれませんが、火事の後始末は消防団員の仕事なのです。消防隊員は火を消したら終わりです。警察も消防も交代制なので、次のシフトの隊員に引き継げばいいだけです。消防団の方はそうはいきません。火事の後の24時間監視はこっちに回ってきます。やはり団員各人本業の方の都合があるので、なんとか都合をつけて、後始末に当たります。会社によっては公休が付くところもあるようですが、自分の会社は有休消化でした。 

 よく覚えているのが町内で起きた火事です。消火まで近隣の消防団を呼び寄せて10時間くらいかかりました。夕方に出火したので、自分は同僚に仕事をお願いして出動しました。消火栓は消防が優先で使用しますので防火水槽から水を引っ張って来て放水しました。2か所使用しました。どうしても消防団の方が水源から遠くなるので、水路が長くなります。放水ポンプに途中給油したのはその時だけですね。

 んで、無事(ではないですけど)鎮火して、あとは監視だけーというところになって、分団長が、食料を買ってくるわーと出て行ったあと、元気溌剌の警察署員が来て焼け落ちた梁が邪魔なので、遺体を出してほしいと言ってきました。えーこっちは20時間以上フル稼働してんだけど・・・。まず班長が切れました。梁が邪魔やったらチェーンソーで切ったらええやんけ!とか言って傍らにあったチェーンソーのエンジンかけて現場に向かっていきました。しょーがないのでこっちもスコップ持って現場に行きました。

 警察の人は遺体を損傷したらまずいとか言ってましたけど、指定場所の上に乗らないと梁や柱がどけれないじゃん。10時間も高温の中で焼かれた遺体は、手足、首もなくなって、焼いた丸太のようになってます。班長はなんか柔らかいものにあたったら遺体だからそこで止めろよとか言ってましたが、こっちも頭が回っていないので適当に灰を掘ってました。班長が荒くたく梁を取り除いた後、さすがにまずいと思ったのか、警察の偉い人が出てきて、後はこちらでやりますからと言ってきました。こっちは素人なのだから、最初から手加減してほしいなーと思いました。

 その時はその後交代がいなくて、24時間監視に付きました。若かったです。今はできません。24時間監視は一応意味があります。燻りで再出火という可能性があるのす。実際そういう現場にあたったこともあります。真夜中に消火栓から水を引っ張ってきました。今から考えれば消防に連絡しておけばよかったのですね。再出火するとさらに24時間監視時間が伸びます。

 もうちょっと文句を言ってみましょうか、消防には小型ポンプ操法訓練というものがあります。どういうことをするのかというと、4人が1チームになって防火水槽から火元に向かって放水するというタイムを争う競技です。白バイの運転技術競技大会に似たものでしょうかね。現役のころ、うちの分団は最低の成績でさっさと予選落ちして、他の分団の練習の手伝いなんかをしていました。当時の方面隊長とか、消防署の副所長とかが熱心で頑張っていましたけど、はっきりいってこれ現場であんまり役に立ちません。

 火事の現場でいち早く放水することは重要に思えますが、消防団単独で消火することはほとんどありません。消防署が到達困難な場所ならいざ知らず、通常は消防隊員の指示に従うのが原則です。うちの分団のような市街地ですと10分もあればプロが来ます。現場をちゃんと把握して消防隊員が使用する水源を開けておかなければなりません 。装備はあっちの方が断然優秀ですしね。

 なんか、体で覚えるのが重要とか言ってますけど、そんなの何回か放水訓練をすれば大体わかります。あとはポンプとかに簡単マニュアルとかつけておけばいいだけです。一番問題なのが、操法訓練では1ラインしか確保できないことです。何度か火事現場に出た経験で言えば、全体の圧を抜かないとラインの組み換えができないのは厳しいと思います。

うーん、あんまり操法訓練にいい思い出は無いですねー。そうですねー。実は操法競技用のホースがあるんですね。1本4万円くらいします。軽量コンパクトでキンクしにくく、競技を有利に進めることができます。


 でも、4万円出せばアラミド繊維使用のロスレス最高級消防用ホースが買えるんですよね。通常のホースなら2本買えたりします。競技用ホースは対水圧が低くて消防ポンプ車につなぐことができません。

 操法競技ではすべての物品が指定の場所に並べておいて、水源から火元までの距離も一定になっています。

 ここまでくると、競技と現場の距離が離れすぎて意味がないのかなと思います。ホース巻きの応援で練習風景を何度もみました。1年目は多少勉強なるなーとか思ってみていましたが、初任者訓練や放水訓練で教わったこと忘れてるだけでした。2年目以降は選手は大変だなーって思って見ていました。

 個人的にはやるんだったら、水源(消火栓だったり、自然水源だったり)、火元を大会ごとに変えて、ポンプ車を乗り付けるところをスタートにして、対応能力を見る競技にした方が面白いと思います。あっ、でも、そんなことしたら練習量が無茶苦茶増えるので今のままでもいいのかな?

 少ない経験だけで言うのは申し訳ないですが、伝令を飛ばさなくてもラインの組み換えができるようにホースをつないだ方が現実的だと思います。

 まずは水源です。消防署が使うので現場近くの水源は避けます。ちょっと遠めの3本くらいホースをつなぐ消火栓、または川、防火水槽などを使います。消防車が先に到着した場合には消防署のポンプ車に直結します。

 その後に自前の小型ポンプを繋ぎます。できるだけ現場近くに置きます。圧の全くかかっていない川などでしたら水源近くにポンプを置く必要があります。消火栓の水圧がそこそこあるようでしたらエンジンをかける必要はありません。そこら辺は現場によって異なります。

 消防署のポンプ車に直結した場合はこれはいりません。

 次が重要です。これは操法には全く出てきません。分岐継ぎ手を繋ぐのです。とにかく現場近くのコントロールしやすい場所につなぎます。


 なぜこれが重要なのかというと、現場では火勢によって放水する箇所が頻繁に変わる可能性があるからです。消防団の場合補助放水が多いので、ラインの組み換えが必要になってきます。これをライン上に一つつけておくと、ライン全体の水圧を抜かずにラインの組み換えができます。もちろん筒先は2つ用意しておいた方がいいです。

 この方法の一番いいところは、ラインの組み換えが簡単なことに加えて、2人でほとんどの操作ができ、放水ができることです。3人いればポンプのところに1人置けるので楽勝です。4人もいりません。連絡は携帯電話で十分です。消防無線は1回も使ったことが無いです。

 後はそうですねー、火事現場には早めに行った方がいいです。うちの分団は2人揃ったら出動でした。消防署の次くらいに到着するのがいいです。着いたら指令車のところに直接行って、何をすればいいかを聞きます。そうすると大体消防ポンプ車にホースを直付けさせてもらえます。水源を探さなくていいので楽です。効率もいいし。うちの分団長は、上の人が来る前に現場についたら、待ってなくていいから、消防隊員の指示に従ってくれ、何か仕事考えてくれるからと言ってました。

 鎮火したら撤収です。いくつかの分団が出るような火事だと、物品が混ざってしまうということがままあります。これはみんな疲れているのでしょうがないです。 物品には名前を書いておきましょう。ホースに関しては面倒ですが多少形が悪くても2本巻きにしておいた方がいいです。それから、ポンプとポンプ車のガソリンを満タンにしておきます。

 自分たちの区域で火事があった場合、24時間監視中にゆっくり物品の手入れができますが、応援で出動した場合、次の休みに片づけるかーとか言ってると、それまでに次の出動がかかって困ることがあるからです。1本巻きホースって滅茶苦茶展開しにくいです。現場に行く前にガソリンスタンドに寄らなきゃいかんとか、なさけないことになります。

 いろいろ文句を垂れましたが、鬱で退団するまでにいろんな経験ができたのは良かったと思っています。ちょっとハードなボランティアがしたい人にはお薦めかな。

 
 

 

 

 

 

 

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